ここでは足の論文の要約を紹介しています。参考文献はPubMedを利用しています。
外側靭帯損傷
足関節外側靭帯・内側靭帯・遠位脛腓靭帯の解剖図
Anatomy of the ankle ligaments: a pictorial essay Pau Golanó)2010
足関節を治療するならまずは解剖を知りましょう。僕も度々お世話になっている文献です。
ATFL(前距腓靭帯)損傷のエコー評価はエビデンスレベルAと非常に高い
Ultrasound or MRI in the Evaluation of Anterior Talofibular Ligament (ATFL) Injuries: Systematic Review and Meta-Analysis)Diagnostics 2023
足関節の傷害後、固有受容感覚の低下によってバランス能力が著しく影響を受ける可能性がある
The Role of Ankle Proprioception for Balance Control in relation to Sports Performance and Injury)2015
筋力だけでなく感覚機能を高める必要があります。
姿勢制御することで固有感覚が養われるという文献もありますね。
前距腓靭帯に存在する固有感覚受容器は付着部特に距骨側に多く存在する
Mechanosensitive afferent units in the lateral ligament of the ankle T Takebayashi )1997
エコーでどの部分の断裂かはっきり特定できればいいですね。
そうでなくても圧痛点によって固有感覚機能低下を疑い評価してみるといいかもしれません
足関節弛緩性および前距腓靱帯伸張性の増大などの構造的異常よりも捻挫後に伴う感覚運動機能の異常の方がCAI の症状との関連が高い
Differences in Lateral Ankle Laxity Measured via Stress Ultrasonography in Individuals With Chronic Ankle Instability, Ankle Sprain Copers, and Healthy Individuals)2012
上記の研究では捻挫歴があり靭帯が伸びている人が優位に不安定性を呈するわけではないという論文でした。つまり固有感覚や筋力などの機能的な問題が大きいことを示唆しています。
固有感覚鍛えたかったら早い段階での荷重やバランス練習が有効です。
超音波LIPUSは靭帯の炎症反応を速やかに終わらせることができ、組織の修復と靭帯の強度を増すことができる
靱帯損傷、筋損傷に対する治療法の検討)2014 外林
LIPUSだけで炎症期、増殖期、リモデリング期に対応することができる優れものです。当てておいて損はないのでぜひ当てるようにしましょう。
運動前のウォームウップなどの準備不足,片足立ちのバランス能力の低下,太り過ぎ,運動に適したシューズを履いていない場合は足首の捻挫率が2〜4倍に上昇する
捻挫の要因は
・着地時の足の傾きが内向きになること
・腓骨筋の反応速度が遅いこと
・足関節の背屈可動域の減少
外側靭帯のなかでATFLは最も弱い力で損傷する
PTFLはATFLの約2倍,CFLは3倍の力で損傷する
ATFL受傷後の固定は関節硬直,筋委縮,固有感覚の低下につながることが多いためできるだけ使用しない方がいい
Understanding acute ankle ligamentous sprain injury in sports)Daniel TP Fong 2009
エコーガイド下で逆前方引き出し(RADT)テストを行うと感度および再現性が高いと思います
●ATFL上束は関節内靭帯のため断裂後、治癒しない可能性が高い→足首の微小不安定性に関与
●ATFL下束はCFLと連結し外側腓骨距骨踵靭帯 (LFTCL) 構成する→足首の大きな不安定性に寄与する
The lateral fibulotalocalcaneal ligament complex: an ankle stabilizing isometric structure )2020 Jordi Vega
ATFL上束は治りにくいためLIPUSなどの物理的刺激による修復促進が必要と考えています。
ATFL損傷に伴い踵腓靭帯(CFL)も損傷している可能性が20〜40%ある
Epidemiology of sprains of the lateral ankle ligament complex
●慢性足関節外側不安定症の病因は足関節不安定性、固有受容覚低下、腓骨筋の衰弱などが確認されている
●足関節不安定性の中でも距骨下関節の不安定性が大きく関与している可能性がある
●CFL(踵腓靭帯)は距骨下関節関節の安定性に関わる
Subtalar ankle instability. A review )J.Karlsson 1997
●CFLはATFLと連続し張力を伝達する
●PTFLとも連続しており関節包の安定性を高める
The lateral fibulotalocalcaneal ligament complex: an ankle stabilizing isometric structure )2020 Jordi Vega
CFL損傷を見逃すと距腿関節および距骨下関節不安定となりOAの要因となることもあるためCFL損傷を疑う場合は医師と相談し固定期間や荷重制限を配慮しなければなりません。
CFLは背屈位でエコーを当てると視覚化される可能性が高い
Dorsiflexion is more feasible than plantar flexion in ultrasound evaluation of the calcaneofibular ligament: a combination study of ultrasound and cadaver Soichi Hattori)2020
CFLが緊張することで腓骨筋を持ち上げ筋収縮しやすい張力を保つことができる
CFLが損傷(たわむ)することで腓骨筋の張力が不足し十分に筋発揮できない
Calcaneofibular ligament may act as a tensioner of peroneal tendons as revealed by a contactless three-dimensional scan system on cadavers H Yoshizuka)2022
AITFL(前下脛腓靭帯)下束による足関節インピンジメント
●内反捻挫後に関節内軟部組織の変性が生じAITFL下束とインピンジメントを引き起こし慢性的な足関節痛となる可能性がある
●足関節背屈9°〜17°でAITFL下束と距骨が接触する(正常)
Morphological features of the inferior fascicle of the anterior inferior tibiofibular ligament)M Edama 2019
![AITFL下束](https://nakaharabo.com/wp-content/uploads/2025/02/スクリーンショット-2025-02-17-13.38.29.jpg)
●AITFL損傷では無負荷脛腓間距離が大きくなる
●足部外旋することで優位に脛腓間が解離する
Syndesmotic instability can be assessed by measuring the distance between the tibia and the fibula using an ultrasound without stress: a cadaver study)2022 H Shouji
腓骨外果の剥離損傷後の癒合不全によって靭帯の弛緩と慢性疼痛を引き起こす
Chronic symptomatic os subfibulare in children)J Bone Joint Surg Am 2023