慢性足関節不安定症(CAI)へのリハビリ
・関節モビライゼーション
荷重下での足関節背屈可動域向上に有意な改善をもたらす
・足底マッサージ
感覚制御が向上し片脚立位のバランス向上につながる
・下腿三頭筋ストレッチ
効果はあるが他のトレーニングと組み合わせることで効果の最大化を図ることができる
Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability)Patrick O McKeon 2016
足首がグラグラするという方には背屈可動域を確保するためのストレッチ,モビライゼーションと足底のマッサージを行うようにしましょう。
マッサージでなくても裸足で足底に刺激を入れるような介入でもいいと思っています。足の裏でボールを転がすやデコボコのところを裸足で歩くなど。足底の固有受容器に刺激を入れることが重要です
足首捻挫後の機能状態の予測因子
・日常生活での関節線の痛み
・荷重下での足関節背屈時の痛み
・ドロップジャンプでの逃避動作
→足関節機能状態低下の潜在的な予測因子になりえる
A Perceptual Framework for Conservative Treatment and Rehabilitation of Ankle Sprains: An Evidence-Based Paradigm Shift)Patrick O McKeon 2019
筋肉ではなく関節に痛みが生じる場合は注意する必要があります。また、段差を使ったドロップジャンプで患側をかばうような逃避動作が見られる場合は足関節の機能低下を疑います。
数値的な足の評価ではYバランステストやホップテストを私は用います。
リハビリにおける運動学習
・学習者が動作目標を明確に認識し目標達成の成功と失敗を認識できるようにすることが極めて重要
→健側と患側を比較したり鏡を用いて視覚的に理解させると目標の成功率が上がる
A Perceptual Framework for Conservative Treatment and Rehabilitation of Ankle Sprains: An Evidence-Based Paradigm Shift)Patrick O McKeon 2019
足首捻挫後の再発予防プログラム
・ホップ安定化プログラムによって腓骨筋,外側ハムストリングス,前脛骨筋,および中殿筋の開始時間が早まり,筋活動の準備が円滑になる
→ホップ練習は片足または両足での前後,左右,ジグザク,8の字を難易度調整して行う
・ホップ動作練習によって床反力が減少し股関節と膝の屈曲角度が増加し膝の外反および内反トルクが減少する
→生体力学的に足関節内反や膝にかかる負担が減る
・慢性足関節不安定症(CAI) 患者は、地面反力のピーク値が高く,ピーク値に達するまでの時間が短い
→衝撃及び足に掛かる負担が大きいことを示唆
Hop-Stabilization Training and Landing Biomechanics in Athletes With Chronic Ankle Instability: A Randomized Controlled TrialMohammad Karimizadeh Ardakani 2019
筋膜に対する静的ストレッチの効果
・筋膜の硬さには動的ストレッチよりも静的ストレッチの方が効果が高い
・筋膜の硬さは可動域の改善に寄与するが筋肉の硬さは寄与しない可能性がある
遠心性負荷の効果
・筋膜の深部に選択的に刺激を入れることができる可能性が高い
→神経,筋膜の硬直はROMに影響があることが示されている
筋肉の硬直がROMに影響する証明はできていない
The effects of static and dynamic stretching on deep fascia stiffness: a randomized, controlled cross-over study)Konstantin Warneke 2024
ストレッチが筋肉の硬さをとり可動域改善につながるということが安易であることがわかる文献です。
もちろん、全く筋肉に作用しないことはないのかもしれませんが他の要因で可動域が改善しているケースが多いようです。
静的ストレッチの効果
神経の硬直を緩和し可動域改善することができる
→可動域低下の要因は筋柔軟性だけではない
The potential role of sciatic nerve stiffness in the limitation of maximal ankle range of motion)Ricardo J Andrade 2018
神経も硬直して可動域制限になり得るとのことです。僕も最近知ったので神経の走行を意識してストレッチをかけることを試みています。
扁平足に対するショートフットエクササイズの効果
・舟状骨の下垂減少
・全体的な足部アライメント改善
→扁平足の患者においても足部内在筋が優位に働く
ショートフットエクササイズによる筋肥大
・少なくとも8週間続ける必要がある
・4〜6週で効果が見られるという報告もある
→足部内在筋をたくさん動かして肥大化させると衝撃吸収・推進力が高まる
Effects of the Short-Foot Exercise on Foot Alignment and Muscle Hypertrophy in Flatfoot Individuals: A Meta-Analysis)Ching Huang 2022
フットコアシステムの理論
神経や感覚受容器,筋肉や腱などの動的支持,骨や靭帯・足底腱膜などの静的支持さまざまな要素が相互作用しあって足部を安定させる
→1つ要因に囚われず多角的にアプローチすることで足部の機能性が高まる
ショートフットエクササイズ(SFE)の効果
・母趾外転筋の活性化は,座位および片足立ちでのタオルギャザーと比較してSFEでは 4 倍以上になる
・SFEは座位から二足立ち,片足立ちの姿勢へと段階的に実行でき,その後,スクワットや片足ホッピングなどの機能的な活動が効果的
足のコアに対する裸足/最小限の履物トレーニングの役割
・裸足でのトレーニングは足底筋力増強が見込まれる
・裸足は感覚入力によるバランスが向上しやすい
The foot core system: a new paradigm for understanding intrinsic foot muscle function)Patrick O McKeon 2015
インソールの利用とSFEを併用すると痛みと機能が改善する
・インソールは受動的な治療のため完治には至らない
・インソールと SFE の両方を含む包括的な治療を少なくとも 6 週間実施することが推奨される
→インソールのみの介入よりもSFEなどの機能訓練をすることでより効果的に痛みを改善することができる
The combined effect of short foot exercises and orthosis in symptomatic flexible flatfoot: a randomized controlled trial)Walaa Elsayed 2023
セラバンドを使用した足部の内外反
足部内外反による長短腓骨筋,前後脛骨筋の強化は内外側・横アーチの支持に関わる
→外在筋強化も回内足軽減には欠かせないトレーニング
股関節外転および外旋筋の等尺性収縮
股関節外旋筋の強化は下肢の内旋を遅くすることができ膝の外反ひいては足部回内を回避することができる
→運動連鎖による足部回内モーメントを減少させる
体幹の安定性がもたらす回内足への影響
・股関節内転筋,腸腰筋,中殿筋,脊柱起立筋,外腹斜筋,腹横筋,腹直筋などの体幹筋は腰骨盤の安定性を強化し,下肢の動き制御する
・骨盤,股関節が安定することで末梢部に加わる足部回内モーメントを抑制することができる
Modification of Pronated Foot Posture after a Program of Therapeutic Exercises)Raquel Sánchez-Rodrígue 2020
普段,裸足で歩く人と履物を履いて歩く人の違い
・習慣的に裸足で歩く人は前足部が広くなる
・裸足では,歩幅の減少や歩調の増加が見られる
・足が平らになり,膝の屈曲が増加し,初期接地時の垂直方向の地面反力のピークが減少する
・習慣的に靴を履いて歩く人は、足底圧のピークが高くなる
→基本、裸足のほうが足には優しい
Barefoot vs common footwear: A systematic review of the kinematic, kinetic and muscle activity differences during walking)Simon Franklin 2015
裸足と靴の特徴
習慣的に裸足で走る人は習慣的に靴を履いて走る人と比較し母趾角度(HA’)が有意に小さく最小距離(D’)が有意に大きかった
足部は広いほうが衝撃吸収機能に優れる。
裸足で走ることは効果的なトレーニング ,パフォーマンス,怪我の予防などのメリットをもたらす可能性がある
Foot Morphological Difference between Habitually Shod and Unshod Runners)Yang Shu 2015
日本で屋外を裸足で歩くのは現実的でないと思うので自宅内や練習の一環として裸足で過ごす時間をながくしてみてもいいかもしれませんね
内在筋とバランスの関係
・足部の内在筋は,外乱発生時に姿勢の安定性を調整する補完的な役割を果たします。
・足部の内在筋の動員量は安定性の限界と正の相関関係にある
→高齢者は特に内在筋の機能低下が転倒リスクに関与する
高齢者における足趾屈筋とバランス
・健康な高齢者の足指屈筋の筋力が機能的活動における支持基底面の前方限界と相関関係にある
→※私見です
FRT(Functional Reach Test)の数値が低い人は足趾屈筋が問題であるかもしれない
Difference in the recruitment of intrinsic foot muscles in the elderly under static and dynamic postural conditions)Zhangqi Lai 2023
足の進行角(FPA)
〜つま先の向き〜
・ 内反足と外反足の平均値はFPAが0°未満もしくは20°以上。FPAの異常は膝の痛みや転倒リスクに関連する
・極端な外反は歩行速度と効率を低下させる可能性
・FPAの内反は膝の屈曲角度の増加し変形性関節症の進行に望ましくない
(A)内反足 (B)外反足
A Deep Learning Method for Foot Progression Angle Detection in Plantar Pressure Images)2022 Peter Ardhianto
皮膚感覚と姿勢制御
・ 皮膚入力は姿勢制御とバランスに重要
・加齢と糖尿病は皮膚の感受性と運動制御を低下させる
・加熱は下肢皮膚反射を有意に増強する
・5~6℃の皮膚温度上昇で振動に対する知覚感度が著しく向上する
皮膚感覚受容器の機能
・マイスナー小体,パチニ小体,メルケル板,ルフィニ終末
・それぞれ滑り,接触,伸展,圧力などを知覚する
→※私見です
これらの刺激を入力しておくと知覚機能が向上しバランス能力が上がる
Heating the skin on the foot sole enhances cutaneous reflexes in the lower limb)Erika E Howe 2023
体重と足部アーチの関連性
・BMIが高いほど,足関節の内反底屈モーメントのピーク値が大きくなる
・アーチ高が低いほど,足関節の内反・外転モーメントのピーク値,および膝関節の内反モーメントのピーク値が大きくなる
→肥満と低アーチの歩容は足首・膝に掛かる負担が増える
・BMIの高さとアーチ高の関連性は認めなかった
→足首・膝に掛かる負担は増えるのでやはり標準を目指そう
Effects of obesity and foot arch height on gait mechanics: A cross-sectional study)Daekyoo Kim 2021
MTP関節屈曲運動の有効性
・ショートフットエクササイズは実行が難しい
・MTP屈曲運動は,足の内在筋を強化するための効果的
・ショートフットと比べても同等程度の効果が期待できる
→ショートフットエクササイズが実施困難な人には有効
Comparison by ultrasound shear wave elastography of toe flexor muscle contraction during MTP flexion exercise and short-foot exercise)Kento Hirota 2024
RST(リズムステップトレーニング)の効果
・RST は扁平足の小児および青年の足と下肢のバランスを有意に改善する
・ジャンプエクササイズは,内側縦アーチの筋肉を活性化し扁平足を改善するのに有望
膝の不安定性と扁平足のメカニズム
正常な膝の発育は内反アライメントから外反アライメントへと進み,6歳頃に安定する
発育過程で筋肉,腱,靭帯の衰弱とアンバランス,過度の体重によって膝の不安定性が生じる可能性がある
膝の不安定性は脛骨の内旋の増加や膝の外反アライメントに影響
↓
足全体に体重が均等に分散されず,特に内側への体重負荷が増加
足首関節の回内が誘発され,内側縦アーチが平坦化することで扁平足を発症
Effects of Rhythm Step Training on Foot and Lower Limb Balance in Children and Adolescents with Flat Feet: A Radiographic Analysis)Ji-Myeong Park 2024
自主的な腱膜リリースの効果
・介入後1時間まで足底筋の柔軟性を高める
・圧迫は一時的な水分量変化により筋膜の弾力性を高める
・圧迫後,局所的な血流が増加し,代謝物の除去と酸素供給が促進される
・組織が温められ,炎症状態が軽減される
・軟部組織への圧力は機械受容器を刺激し,筋肉と筋膜の緊張を軽減する
Self-Myofascial Release of the Foot Plantar Surface: The Effects of a Single Exercise Session on the Posterior Muscular Chain Flexibility after One Hour)Luca Russo 2023
反復跳躍における足底腱膜の厚み
・ジャンプ着時時の足底腱膜が
厚いほど速くかつ高く跳ぶことができる
→肥厚すると足底腱膜炎といわれているがスポーツする上では厚みも重要となる
Contribution of Plantar Fascia and Intrinsic Foot Muscles in a Single-Leg Drop Landing and Repetitive Rebound Jumps: An Ultrasound-Based Study)Masanori Morikawa 2021
滑液包炎について
・滑液包は滑膜細胞で覆われた嚢胞で,高圧または反復摩擦にさらされる部位に存在
・足部と足首は,外部環境からの機械的ストレスを受けやすいため,滑液包炎が最も発生しやすい
→メカニカルストレスを減らすための足づくりが治す秘訣
Recalcitrant Lateral Premalleolar Bursitis of the Ankle Associated with Lateral Ankle Instability)Masashi Naito 2017
アキレス腱炎について (組織レベルで何が起きているか)
・局所的または散発的な厚みの増加 (腱症)
→断面積の増加
・正常なコラーゲン構造の喪失
→腱剛性の低下
・プロテオグリカン量の増加
→粘弾性の低下
・組織の全体的な崩壊
アキレス腱炎の障害メカニズム
・回復時間が不十分な状態での過度の負荷
・履物や足首を背屈させる活動 (例: 上り坂のランニング)
・解剖学的異常 (例: ハグルンド変形) による
アキレス腱および踵骨への圧縮力増大
・足底屈筋の筋力低下
・股関節神経筋制御の欠陥
・足背屈および距骨下関節可動域の異常足の回内増加,および体重増加
アキレス腱炎の保存治療
腱のリモデリングとふくらはぎの筋肉機能の回復を促進するために,活動の修正と漸進的な腱負荷運動を行う
Contribution of Plantar Fascia and Intrinsic Foot Muscles in a Single-Leg Drop Landing and Repetitive Rebound Jumps: An Ultrasound-Based Study)Masanori Morikawa 2021
アキレス腱炎に対する体外衝撃波(ESWT)の効果
・ESWT修復プロセスは,腱細胞の増殖とコラーゲン合成に起因するとされている。
・無血管組織または血管がほとんどない組織の微小破壊を通じて治癒プロセスを再活性化
その結果,新生血管形成,血液供給の改善,組織再生が促進される可能性
Extracorporeal Shock Wave Therapy for Achilles Tendinopathy)Magdalena Stania 2019
ハグルンド症候群
・足の骨と軟部組織の異常
・かかとの骨の部分(アキレス腱が付着している部分) が肥大
・踵後ろの痛みで,安静時に痛みが増す
Haglund’s Syndrome: A Commonly Seen Mysterious Condition)Raju Vaishya 2016
小児における踵痛
・踵にかかる圧力が減少すると重心が前方偏位する
・姿勢の悪さが痛みの原因となる
・これらの要因は,踵の骨端線の牽引力が増大し小児の踵痛につながる可能性がある
Characteristics of Pressure on the Apophysis in the Course of Paediatric Heel Pain-Preliminary Report)Aleksandra Bitenc-Jasiejko 2023
踵痛に対する機械刺激の効果
US(超音波)とマッサージはいずれも,患部の筋肉内の血行を促進し
疼痛感受性物質の除去を促進するとともに筋線維を機械的に刺激することで
【疼痛軽減】【筋緊張緩和】【筋硬直緩和】を図る
Randomised control trial to compare the efficacy of traditional Thai massage and ultrasound therapy for treating plantar heel pain) Supamas Somphai 2025
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