外側靭帯の修復過程及びアプローチ

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外側靭帯(特に前距腓靭帯)は血流が乏しく、治癒には時間がかかります。 しかし生理的には、他の靭帯と同じ「炎症期 → 増殖期 → リモデリング期」をたどります
 
どの過程でどんなアプローチが必要かを考えていくと治療が円滑に進められると思います
患部への負荷はずっとかけちゃダメという認識の方が多い気がします。
この機会に適切な負荷を知りましょう

① 炎症期(受傷直後〜約1週間)

🔬 生理反応
外側靭帯の修復過程
① 炎症期(受傷直後〜約1週間)
生理反応
・靭帯の断裂・出血
・炎症細胞(好中球・マクロファージ)が集まり、損傷組織を除去
・サイトカイン・成長因子(TGF-β、PDGFなど)放出
・腫脹・熱感・疼痛・可動域制限が強い
⚫︎ 理学療法のポイント
・RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)
**患部外運動(股・膝・足趾)**で血流維持
足関節は中間位で安定化(テーピング・固定)
効果
過剰炎症を抑制し、血餅の安定化
循環維持で修復準備を整える
この時期は組織の炎症過程を速やかに終わらせることが最優先です。間違ってはいけないことが炎症は治る過程で必要なこと。炎症に伴う熱や痛みを全て取り除くと逆効果になることがある
生理反応を理解してアプローチしていこう
② 増殖期(1〜6週間)
🔬 生理反応
線維芽細胞が増殖 → Ⅲ型コラーゲンを産生
外側靭帯の修復過程
② 増殖期(1〜6週間)
・線維芽細胞が増殖 → Ⅲ型コラーゲンを産生
・新生血管が入り、代謝活性が上昇
・損傷部位に「肉芽組織」が形成され、靭帯断端を橋渡し
・ただし線維配列はまだランダムで脆い
⚫︎理学療法のポイント
・痛みのない範囲での可動域訓練(背屈・底屈中心)
・部分荷重 → 全荷重へ移行(体重刺激が線維配列を誘導)
・短下肢筋トレ(腓骨筋群・足内在筋)で外反制御を強化
・軽度モビライゼーションで関節包癒着を防ぐ
効果
適度な張力刺激 → 線維が少しずつ方向性をもちはじめる
筋活動で靭帯への過負荷を分散し、循環改善
この時期になって来ると運動を積極的に行います。当然痛みが伴わない程度の強度で進めます。
運動の方向や強度が重要となるので組織の解剖知識が必要

③ リモデリング期(2〜12か月)

生理反応
 
・Ⅲ型コラーゲン → Ⅰ型コラーゲンへ置換
 
・負荷方向に沿って線維が再配列(メカノトランスダクション)
 
・強度が徐々に増す(ただし完全再生ではなく瘢痕的修復)
 
⚫︎理学療法のポイント
・負荷方向を意識した運動(例:片脚スクワット、ジャンプ着地)
 
・バランス・固有受容訓練(不安定板・片脚立ち)
 
・スポーツ復帰動作(カッティング・加速減速)
 
・足関節周囲の柔軟性再獲得(アキレス腱・距骨下関節)
 
効果
 
張力方向に応じた線維整列 → 靭帯強度アップ
 
動的安定性・固有感覚の回復
 
再発予防につながる
 
 
この時期は痛みが強くなければどんどん負荷をかけていきましょう。靭帯も新しい組織になったばかりで弱々しいです。筋トレの如く鍛えることで強度が増します

外側靭帯修復期ごとの注意点

① 炎症期(受傷直後〜約1週間)

❗ 注意すべきポイント
観点 注意内容
🔹過負荷 損傷部に張力をかけすぎると血餅が破壊され、治癒遅延や再出血を招く。→ 無理な関節運動・荷重は禁止。
🔹固定角度 過底屈・内反位で固定すると断裂部が離開しやすい。→ 足関節は中間位(軽度背屈)で固定。
🔹冷却過多 長時間のアイシング(20分以上の連続)は血流低下を招き修復を妨げる。
🔹患部外活動 安静しすぎると循環不全・筋萎縮。→ 股関節・膝・足趾の運動はむしろ積極的に行う。

やっていいことと悪いことを解剖的・生理学的に把握しておきましょう。そうすることで復帰の早さが格段に上がります

「守りながら動かす」 がテーマ。
 患部は保護、他部は活性化。血流と修復環境を両立させる。

 

② 増殖期(1〜6週間)

注意すべきポイント
観点 注意内容
🔹荷重量 早期に全荷重へ移行しすぎると、未成熟なⅢ型コラーゲンが断裂するリスク。→ 痛み・腫脹の反応をみて段階的に進める。
🔹可動域訓練 背屈・底屈方向から開始。内反ストレスを早期に与えると靭帯修復を妨げる。
🔹マッサージ・徒手療法 肉芽組織形成中に強い摩擦を与えると、出血や炎症再燃を起こす。→ 軽いモビライゼーションや皮下滑走程度にとどめる。
🔹筋トレ オープンチェーンでの過度な動き(特に底屈・内反)は禁忌。→ クローズドチェーンで安定化筋を中心に。

→ 「刺激は少なすぎず、多すぎず」。  軽度の張力刺激が、線維配列を整えるスイッチになる。

 

③ リモデリング期(2〜12か月)

注意すべきポイント
観点 注意内容
🔹負荷方向 正しい方向(背屈・外反方向)への張力は線維整列を促すが、誤った方向(底屈・内反)では微小断裂を繰り返す。
🔹負荷量 高負荷・高頻度のトレーニングを急に導入すると再損傷リスク。→ 週単位で漸増する「メカニカルロード管理」が重要。
🔹固有感覚 固有受容器の回復が遅れると、バランス不良 → 再捻挫。→ 早期から段階的に不安定面トレーニングを導入。
🔹柔軟性 距骨下関節の可動制限が残ると、代償動作で再発リスク増大。→ ストレッチやモビライゼーションで全体の連動性を回復。

 

まとめ

時期 注意の主眼 キーワード
炎症期 再出血・血餅破壊を避ける 「守りながら動かす」
増殖期 過負荷・炎症再燃を防ぐ 「刺激は少なすぎず、多すぎず」
リモデリング期 負荷方向・量・タイミングの管理 「方向を整えながら鍛える」

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